「えっ……いいですけど」
すると若いお兄さん、
「よくお見かけしますけど、いつもお一人ですね」
少し、めんどくさいな。
「そう。誰にも気を使わず、ゆっくり飲める所なの。マスターの距離感が気に入っているの」
「僕の友人ですよ。僕、よく来ているのですよ。二か月前からあなたを見ていました」
「そうなんですか。私は人を見ないんですよ」
ウザいな。
「これから、声をかけてもいいですか」
「たまにね。一人で飲みたい時もあるから」
毎回は声をかけないで欲しい。
「ありがとうございます。嫌な時は断ってくださいね」世間話をしていても若いのに話題が豊富、話も面白い、ついつい笑ってしまう。営業マンかなと思った。
何度か席を一緒にした。本当に話し上手。人を引き寄せる力がある。魅力的だ。毎回声をかけてくる。面白いから話す。意外と紳士だ。でも……たまには一人で飲みたい時もある。
三か月が過ぎた頃。
大好きな、バー・カッシュでゆっくり飲んでいた。いつもの若いお兄さん……涼真君が隣に来た。
「少し、いいですか」と聞いて、
「ええ、どうぞ」と枝豆を食べた。あ~あ、今日は一人が良かった。断れば良かったかな。
「僕とお付き合いして頂けませんか」
次回更新は5月22日(木)、21時の予定です。