【前回の記事を読む】アパートを追い出され行くあてのない私…置いてもらう条件は婚約者の振り?!…のはずなのに抱きしめられキスを…
第一章 雨の日の出会い
俺はどうしたというんだ。冷静さを失い、思わず沙優にキスをした。そして、沙優を抱いてしまった。こんなにもドキドキとして興奮してしまうとは、俺らしくない行動だった。
「すまん、先にシャワー使うぞ」
「はい、大丈夫です。南條さん、お仕事ですもんね」
俺は先にシャワーを浴びた。シャワーを浴びながら、昨夜のことが走馬灯のように蘇る。信じられないほど、熱くなった。こんな気持ちになれる女が、この世の中にいたなんて……
今の彼女とは、決まった日に愛し合う、いや正確には性的欲望を処理するといった方が正しい。抱きたいという気持ちになったことはない。
今までの俺の人生の中で、相手は誰でも良かったのである。たった一人を除いては……
第二章 初めて抱く不思議な気持ち
「沙優、金ないと言っていたな、これで必要なものを買え」
彼はカードを差し出した。
「そんなこと出来ません」
「しかし、冷蔵庫には何もないし、困るだろう」
そう言って彼は私の手にカードを握らせた。
「では、仕事見つかったらお返しします」
「いや、沙優はしばらく働かなくていい。俺の婚約者が働いているのは、世間体があまり良くないからな」
「でも……」
彼は私を引き寄せ見つめた。
「沙優は俺を信じて付いてくればいい、わかったな」
「はい」