「血液型? ああ、そうだけど。なんだ急に。今更それがどうした」

謙介は質問を急かすようにして返事した。

「もしさあ。血液型が違うって言われたら、どう思う?」

「は? 血液型が違う?」

謙介は眉間に皺をよせ、物思いに耽り始めた。

しばらくの間、沈黙が流れた。

「俺、血液型が違うらしいんだよ」

「え? どういうことだ」

険しい表情のまま、謙介は答えた。

蓮は、病院で血液検査を受けた事、検査の結果B型だと判明した事を謙介に説明した。家族の血液型の構成についても。

謙介は驚きを隠せない様子だった。謙介は、肩まで浸かっていた体を少し冷ます為に湯船から上がり、岩に腰掛けながら、蓮の話を聞いた。

「成る程なあ。そんな事があるのか? ドラマみたいな話だな。それで、お前の親は何型なんだっけ?」

「おふくろはO型で、兄貴もO型。親父の血液型は、忘れた」

最近になって父親と再会したと聞いていた謙介は、蓮が父親の血液型を知らないのも無理はないのだろうと思った。

「なら、普通なら親父はB型じゃないのか」

「まあ、そうだろうな。だけど、もしB型じゃなかったとしたら」

蓮はそこで話を止めた。馬鹿馬鹿しい妄想をしている自分に苛立ってきた。

謙介は、何か言いたげに蓮の顔をじっと見ている。

一度ため息をついてから、謙介が言った。

「それで、おふくろさんにはその事、話したのか」

「いや。謙介だったら、話すか?」

謙介は口を半開きしたまま、蓮から目を逸らした。空は薄い雲が泳ぎ、夕日は水平線に隠れ始めている。

永吉との思い出を振り返ると、永吉が本当の父親ではないかもしれないという事実に、蓮は目を伏せたくて仕方がなかった。

【前回の記事を読む】「あなたの血液型ですが。検査の結果は、B型でしたよ」「B型!?」...医師から言われたその言葉に、愕然としてしまった

次回更新は2月11日(火)、20時の予定です。

 

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