外部環境

さらに庭を歩きながら、視覚、味覚、触覚を刺激できるように、童心に帰ったイタズラ気分を引き出すように、ブルーベリー、ラズベリー、イエローベリー、ブラックベリー、ストロベリー、ぶどう、りんごを園路沿いに植えました。歩きながらつまんでもらいやすいものです。

この仕掛けは訪れる子供たちも大喜びで、訪問されたご家族さんのお孫さんたち、慰問に来てくれる園児たちが庭を駆け回って、果実をつまんでいる光景を入居者さんたちは楽しく微笑んで眺めています。

そして、近所の小鳥たちが庭の芝生や、こぼれ落ちた木の実をついばみに毎朝やってきます。毎朝の素晴らしい小鳥のさえずりと、毎夕の涼やかな虫の音で癒される庭になりました。

裏庭は北向きの部屋の目を楽しませるために作りました。テーマは野生の花々溢れる野山を散策したかのような没入感のある庭です。

開業当初、なかなかガーデナーを見付けられず自己流でやろうと初夏に平岡樹芸センターの竹澤樹芸店に見学に行きました。そこで綺麗なお嬢さん(竹澤香葉子さん)が控えめにあれこれと推薦してくれました。

そのアイデアは控えめながら、その背後に膨大な知識があることをすぐに察せられるもので、その場で彼女に庭作りをお願いしました。

たまたまのことではありましたが、香葉子さんはイギリス在住で、イギリスの庭づくり(ガーデニング)を学ばれ、偶然、夏に帰省していたのでした。何という幸運だったか、すぐに綿密な植栽図面を描き、毎日ご家族総出で造園してくれました。

そして3年が経ち、園路を歩くと野山の花々に囲まれ、たちまち異空間に没入できる素敵なブリティッシュガーデンになりました。

訪問診療のたび、庭のうつろいを楽しんで帰ってきます。もちろん、入居者さんたちも介護士に支えられながら、散策してくれています。しかし、一番楽しんでいるのは私かもしれません。

このような外部環境は常にうつろい、変化があり、適度な刺激を入居者さんに与えていると実感します。こうした庭があることで、住宅の内側以外にも人間関係の刺激を適度に調節できる仕掛けにもなります。人に疲れた時には庭でぼーっとたたずむと楽になれるのじゃないでしょうか。

開業してもうすぐ8年。目下の悩みは皆さん、出不精なことです。これだけの庭ができ、住宅内から皆さんが景色を愛でて喜んでくれる。しかし、皆さん、本当に出不精なんです。年を取るとこうまで面倒くさがりになってしまうか?と驚くほど、外に出られない。

日光浴は骨を強くするためにも大事であり、外に出ることは脳の活性化、体の活性化にとても重要なのです。住宅スタッフや訪問リハビリスタッフに繰り返し、できるだけ外に連れ出すようにお願いしています。

年に2回、ご家族さん、ご近所さんを招き、ガーデンパーティを行っています。皆さん、大変楽しみにされ、この時ばかりは喜んでお庭に出られます。