役割、仕事、趣味の創出
外山先生の書かれた『自宅でない在宅』では、『住み替えで環境が大きく変わることでの最大の落差を「役割の喪失」と著されています』注1)。住み替えた途端にスタッフに全てを委ねてしまい、何の役割も無くなった生活ってどうでしょうか?
人はいつまで経っても何か役に立っている、役割があることで気持ちに張りが出て、元気を保てるのじゃないでしょうか。そういう面で退職後も適度に仕事を続けられるというのは、健康を保つためにいいことです。
終の住処でやりがい、生きがいを創出されることはとても重要です。
「美しが丘」の庭には入居者さんの出番がたくさんあります。植栽、水やり、雑草処理、果実摘みなどをお手伝いしてくれます。
お庭の手入れをしてくださっている宮本さんは、国際大学の城座先生、平林先生からご紹介いただきました。実は農業高校の校長先生を退職されたスペシャリストです。
そして、退職後はボランティアで趣味と実益を兼ねて園芸療法を行い、地域の高齢者さんたちの生きがい作りを手伝われて来ました。
宮本先生と会話を楽しみながらお庭のお手伝いをしてくださる入居者さんは笑顔で、こう話してくれます、「お庭のおじさんとお話しして、お庭の手入れをしていると、とっても楽しいのよね」と。
末期癌と告知され、ご自分の余命を知っていた男性入居者さんが前庭のマリーゴールドを一生懸命に植えてくれました。前職は学校の校長先生だった方で、今も光り輝いたその姿が目に浮かびます。
裏庭に園芸療法ができるよう、入居者さんが園芸を楽しめる畑があります。ここは宮本さんの聖地!
トマト、とうきび、ズッキーニ、さつまいもなど、毎年いとも簡単に上手に作ります。それを入居者さんは眺めたり、ちょっと手伝ったり、でも、園芸療法のクライマックスは収穫の時です。
元気な入居者さんたちみんなで芋掘りをし、たくさんの笑顔が生まれます。久しぶりに手を泥だらけにして楽しそうです。手を動かす、物を作る、物を生み出す、というのは一番簡単に得られやすい、やりがいであり、喜びですね。