人間関係の調整
『人間関係は重要な社会的刺激です。積極的に交流をしたい方も、一人で過ごされたい方も、みんなの活動を横で見ていたいという方もいます。共有空間では、対人距離が調整しやすいように、規模の異なる空間が緩やかに重なるような構成が望ましいでしょう』注1)
先ほどの「空間の規模」でご紹介した、「美しが丘」の小スペースの設置と工夫はまさに対人距離を調整するためにも極めて有効に働いています。
リビング脇の小スペース、西南の図書スペースと東南の談話スペースを配置することで、各々が自分のペースで過ごせるようになります。
ある時はリビングで大勢とレクリエーションに参加、一人になりたい時は図書スペースや談話スペースでくつろぐ、参加したくないけど、みんなとなんとなく一緒にいたい時はリビング脇にたたずんだりしています。
実はレクリエーション室を併設してあり、カラオケや麻雀、囲碁将棋などで使われることを想定していました。
蓋を開けてみれば時々、入居者さん同士の麻雀がやられるくらいで、自発的にはほとんど使われない部屋となりました。
部屋という閉鎖空間に入りこみづらいようで、勿体無いので訪問リハビリにも使用するリハビリ室兼用となりました。時々、自主トレをされる方が見られるようになりました。
スペースというのは不思議ですね。自然な社交を生むのは開かれたオープンスペースなんだと思います。
一方、トレーニングは閉鎖空間が適しているようです。
まぁ鍛えている姿、リハビリの姿はどうしても本人にとっては弱いところですから、他人に見られたくないのだと思います。それに開かれた空間でのトレーニングって、自分でも集中できないと思います。というわけでレクリエーション室は麻雀と個トレの部屋と化しました。
さらに、人間関係の調整には中庭と裏庭を用意しています。一人になりたい時、ちょっと自然の中でくつろぎたい時、ゆっくり過ごすことができます。
サ高住「美しが丘」の庭は美しい丘の地名に恥じぬ庭になるように整えました。中庭としたことで、入居者のプライベート感が生まれ、落ち着いて散策、滞在することができます。
注1)山田あすか:住環境を考える 認知症を持つお年寄りをたすける生活環境のあり方.建築、環境計画室 (山田あすか) 東京電機大学未来科学部建築学科 goo ブログ , https://blog.goo.ne.jp/yamadaasukalab/e/2c5 ac3c0060858e21b7c494436988724: 2009
【前回の記事を読む】認知症の2人が集う陽だまり空間。話が全く噛み合っていないのに話に花を咲かせている不思議な光景
次回更新は12月19日(木)、20時の予定です。
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