それは数日で元に戻ったので、一安心だった。

薬を大量に飲むと脳細胞の一部が死滅し、そういった症状が出るそうだ。

そしてトイレに行きたくなり、点滴を持って彼の付き添いで行ったが、意識朦朧としている私は点滴の管が「これなぁに?」と不思議で引きちぎってしまい、血が逆流して、点滴の管から血が噴水のように逆流して、パジャマも廊下も血まみれになって夫は慌てて看護婦さんを呼びに走り回っていたようだった。

それでもわたしは状況が把握できてなかった。

その後看護婦さんから点滴を引きちぎることができないように厳重にテープで止められた。

彼がいなくなった時に、義母に彼の暴力の話を初めて打ち明けたが「あらまぁ」と言うだけだった。

私が意識朦朧としている間に、彼がママにも連絡したようだが、彼は「くだらない喧嘩でかおるが薬を飲むなんて馬鹿な真似をした」と、私をバカな痴話喧嘩にキレた悪者にしていたらしく、ママは病室のドアを開けるなり「なにバカなことしてるの!! お前はバカか!!!」と私ひとりを悪者にし、怒鳴り散らしていた。

普通、自殺未遂のような真似をした子供に本気で怒鳴り散らす親がいるだろうか。

なぜ、そうなったのかを、向き合って聞いたり、心配したりするのではないだろうか。

もちろんママは夫のDVのことなんか全く知らない。

ママは私の話など一切聞いてもくれなかった。

普通、殴られたアザなどは翌日に出るものだが、殴られ方がひどく、病院のベッドにいる時には既に私の身体にはアザが沢山出ていたが、まさか彼が私に暴力を振るっていると夢にも思っていないママはそんなアザに気づきもしなかった。

私には言い返す気力も、考える力も、言い訳する思考力も、どこにもなかった。

幸い、命に別状を来すような薬ではなかったらしく、お医者さんも「良かった」と言って下さり、身体から薬を抜くために一晩点滴が必要なため、一泊入院することになった。

もう一日入院を勧められたが、退院を希望し、一泊で退院し、新婚旅行までは自宅療養をすることになった。

そして数日後、私達は結婚するため、ハワイに旅立った。