あまりにも大きな空間を埋める小空間とアートの効果

確かに出来上がった住宅は自宅に比べればあまりにも大きな空間でした。それをなるべく小分けに感じられるよう、ユニット型を意識しました。

建物をL字型にし、そのそれぞれに図書室や娯楽室、休憩スペースなどの小さな空間を用意しました。小さな自室に閉じこもっているとストレスがたまりますから、広い空間に出て、リラックスしたい時もあるでしょう。

一方で、広いところに居たいけれど、人から逃れたい時もあるでしょう。そんな時に、自室からも公共の人からも逃れられる小空間を両翼に配置しました。

自宅も自室、公共の場、そして自分のお気に入りの場があるでしょうから、そのようなスペースとして小空間に期待しました。

これに思った通りのいい効果が出ました。ここで本を読んだり、自室と異なる日当たりを楽しんだり。碁を打ったり、認知症のある方同士で、日向ぼっこをしながら会話を楽しんだり、という光景が見られます。

でも、廊下は両翼共に長いのでここを単調にしないよう、各居室に表札を付けられるようにしています。そしてありがたいことに、入居者さんたちから絵画のご寄付をいただきました。

絵画や表札、独自の印を頼りに歩くことができます。単調な長い廊下は、自分がどこにいるかわかりにくいですから、そんな工夫をしています。

そして廊下の色調は1階を介護度の軽いかた、2階を介護度の重いかたを中心の運用にと考え、変化を付けました。実際稼働してみると、介護度別の住み分けは不要でした。でも、色を変えると雰囲気が変わるためか、時々1階の方は2階へ、2階の方は1階へお散歩に見えられます。

図書コーナーで囲碁を楽しむ