2階建ての古い小さな家で、トイレも下から手が出てきそうな雰囲気だった。夏には玄関横のトイレのマンホール辺りからウジ虫が上がってきていた事もあった。

引っ越ししても学校は同じだったが、地区が変わる事で登下校の時には近所の年上の子からイジメられた。

しかし勝也は相手が年上でも喧嘩をしていた為、みんなからは頭のおかしい奴だと思われていたようだ。そんな事もあって遊んでくれる友達はおらず、いつも一人で家に居る事が多かった。

家は変わったが、お父さんは居た。

実の姉と義理の姉が一緒に住んでいた事もあったり、義理の兄が住んだりもしていた。時には兄の友達が数人来て袋に液体を入れて吸ったり吐いたりしていた。兄達の真似をして勝也もやってみた事があるが臭くて気持ち悪くなり兄達のようにはいかなかった。

兄は勝也に優しく、近所の年上の子にイジメられた事を知ると、相手の所へ一緒に文句を言いに行ってくれていた。夜には兄と二人で2階のベランダから家を出た。兄は勝也にバイクの運転を教えたり、鍵がないバイクのエンジンのかけ方を教えたりもしていた。

小学6年生の頃に引っ越しが決まり、また転校する事になった。弓子が働いていた喫茶店の経営者のおばちゃんと同じマンションに住む事になった。

そのおばちゃん家族とは勝也が5歳か6歳くらいの頃から付き合いがあり、親戚のような関係だった。

そのおばちゃんには勝也と同い年の女の子紗香(さやか)と、その下に二人の妹が居た。そのおばちゃんはお金持ちで、大きな車に乗って焼肉に連れていってくれたり、その喫茶店に行くと自分の顔より大きなオムライスを作ってくれた。

その家族にはお父さんは居なかったが、色の黒いおじさんがよく来ていた。おばちゃんは引っ越しと同時にその喫茶店を閉店し、そのマンションの1階にスナックをオープンした。

勝也は、また新しい学校に変わるので、今度こそ喧嘩はせずに友達を沢山作ろうと意気込んでいたが、やはり転校生はイジメの的にされ、1週間ほどで喧嘩になってしまった。

これだけ頻繁に引っ越しや転校を繰り返すと、その間に教科書をなくす事もあるし、先生の教え方も違ったので、授業に集中できず、まったく勉強に付いていけなかった。その上、兄の影響もあって、とんでもない不良になっていた。

 

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