その2週間後、頼んでもいないのに「美しが丘にあんたの言う条件にあった土地があったよ。まだ、原野だけれどどうする?」と連絡がありました。批判してしまった手前、引っ込みがつかなくなりました。
また、学んだ知識を活かしたい欲求も湧いてきました。こうして、大通りから少し入った閑静な住宅街とモモセ乗馬場の大きな林に囲まれたところに土地を購入しました。
さて、建築にあたり、土地の基準を調べたら第1種低層住宅専用地域、高さ制限10m、建蔽率40%、容積率80%と商業施設を作るには使い勝手の悪い土地だと知りました。それにしても手際が悪すぎですね。ここでも、いかに間違ってやってしまったかおわかりいただけると思います。
商業的に建てられないなら、仕方がない。むしろ建蔽率の低い土地は広い庭を作るのにうってつけと割り切って設計することにしました。
利益効率よりも逆境を跳ね返し、理想の終の住処を作る挑戦で、社会貢献ができるからいいという思いで突き進むことにしました。
商売をやったことがない怖さでしょうか、若気の至りとでも言いますか、振り返るにずいぶん大胆なことをしたと思います。
ただ、スウェーデンで学んで来たことを実行して、失敗する気はあまりしなかったですね。それだけ、スウェーデンでの街作り、高齢者介護学に納得できるものがあったのです。
住宅の形についても継続性、すなわち、わが家と思ってもらえる施設の形はどんなものか考えました。高齢者住宅はどうしたって、自分の家ではありません。でも多少なりとも親しみを持ってもらえる形とは?
自分が見学した中では多くの施設はやはり施設でした。どこか親しみがわかない。
【前回の記事を読む】高齢者の住環境には「役割」が重要。デンマークで提唱された高齢者福祉の3原則とは?
次回更新は12月14日(土)、20時の予定です。
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