夜を駆ける――不倫発覚前半――
子宮全摘 3
手術は嫌だけど、面倒な生活や仕事から逃げられると思うと楽しみになった。
六人部屋で手術する人ばかりで、情報交換もバッチリ。
部屋の入り口から順番に、トコロテンのように毎日一人手術室に押し出される。
私以外は連日家族が「頑張れ」と応援に来る。言い方は悪いが受験の前日のような微笑ましい姿。
昼間応援を受け気丈にしていても、子宮を無くした夜は、就寝時間になると、忍び泣きがあちらこちらから聞こえてくる。
明日は私だ。長い夜だった。
追伸
昼間の話題はもっぱら、麻酔が覚めた時、思いもよらない言葉が出るらしい、みんなで名言を残したいといろいろと考える。
六人部屋で一番上品なご婦人の旦那様、とても紳士的で毎日見舞いに来てベッドに寄り添っていた。
私といえば、入院の荷物を置いてさっさと帰って行った元夫。
上品なご婦人が話に入ってきた。「わたくし一度でいいから、このバカヤローいい加減にしろ」と言ってやりたいと真顔で言ったので、みんなで大爆笑。
子宮全摘 4
術前、術後の説明があるので、予約をするように言われたが。元夫は仕事が忙しいので自分で聞けと言われたので、その旨担当医に説明すると担当医が激怒した。
元夫は摘出した子宮など気持ち悪いので見たくないのはよくわかる。
元夫だけに私の大事な子宮を見せたくない。そこで担当医に摘出した子宮を見たい、それが無理なら写真を撮ってもらいたいとお願いした。
手術当日、一人で手術室に向かった。それが……。
追伸
気の強い女と認識され回復室から病室まで歩かされた。
ベッドから起き上がる時、前のベッドの人は看護師さんが優しく起こしてくれていたので、私もと期待していたらシーツをベッドに結び付け、シーツを頼りに起きなさいと言われた。
前のベッドの女性が「〇〇さん、声が元気すぎるのよ」とコツを教えてくれた。
子宮の写真、先生から頂きました。