さて、富檣高校の歴史はこのくらいにして、本題の学園祭の話に戻ろう。

学園祭は各クラスや各部での出し物はなく、二年生が中心になり、みんなで協力して行われる。一年は指示に従う単純労働といった趣で、三年は昨年の補うべきところなどを助言し、サポートにまわる相談役だ。

夏休み明け、久しぶりと日焼けした友達の顔を見ながら、馴染みの面々を探す。

おーいたいた。後ろの隅にたむろしているのは颯太(そうた)・大和(やまと)・蓮(れん)。何を話しているのか猛烈に笑い転げている。詩(うた)はまだいないようだ。

「おはよー久しぶり。颯太焼けたねぇークラブ焼け? 大和は白いままだねぇ。またまた部屋にこもってアニメざんまいですか、体に悪いよたまには外に出なよ。蓮はそれなりに日に焼けたみたいだけど海山に行った感はないねーどうしてた?」

「俺は建築物巡りだよ。行きたかった大阪中之島図書館とか有名どころの建物を見に行ってきた。柚子は?」

「私は親と温泉。あとは詩と食べ歩きアンドショッピングそれと映画かな」

「俺は俺は柚子~」

颯太が話し出す前に、大きな声がする。

「おっはよーお待たせ!」

背中を叩かれ振り向くと詩の顔。

「遅いよー昨日別れてから一人で歩いていたら、ガン見してくる奴がいたから、喧嘩売ってんのかって思い。何か用ですかって近寄って言ってやったら逃げてった」

「何それ! 昨日の柚子は可愛かったから見とれていたんだと思うよ。あんたはねぇ仲間内の男子はさておき、毛嫌いして直ぐに喧嘩腰になるのが良くないよー。まっそこもそれなりに魅力だけど」

「な、なにが魅力だ。わけわかんない」

「いや、柚子の態度は正解だと思うな。柚子を見つめてくるなんて百年早いよ!」

「颯太! 横合いから変なこと言ってこないでよ。でも私に賛成してくれたのはアリガト」

「おいおい、二人の世界作ってんじゃない俺たちも混ぜろよ。それで昨日は何だって」

大和の言葉に促され、みんなそれぞれ休み中の話を詳しく話し出す。

気の置けない私の仲間はそれぞれに楽しく変わっている。

 

次回更新は9月28日(土)、20時の予定です。

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