仕事をこなす。今日で四日目、誰かわからないなぁ。ゆりさんが身近にいると言っていたな。ふっと後ろを見た。いつものように秘書の横田がいるだけ。
「えぇッ、横田!」……。
思えばいつでも側にいて僕を支えている。僕の側で空気みたいにいて、当たり前のようにいつもいる、疲れない人、そうか。横田をずっと見ていたら、
「社長、どうしましたか。私の顔になにかついていますか?」
「いやいや、何でもない」
よく考えたらいつも僕の後ろにいて六年、一度も休むことがない。居ないと一番困るのは僕だ。三日間考えてみた。横田博美だ。独身だし、僕は長くいるのに疲れないし僕の視界に入らないようにしている。良く見ると可愛い……。
十日後。
「横田、今日、夜は空いているか」
「仕事ですか」
「いや、プライベートだ」
「えっ、私ですか。どうしたのですか」
「空けておいてくれ。ラ・ゾーンの個室を予約してくれ」
「はい……分かりました」
僕は勇気を出して、
「横田君。今、彼氏はいるのか?」
「なんですか急に。居ませんけど、お見合いでしたらお断りします!」
ムッとしている。
「そうじゃない。良かった! 僕と結婚を前提に付き合ってくれないか?」
「えぇ~! 社長、何を言っているのですか。どうしたのですか!」
「僕の女神は身近にいると言われた。しばらく見ていたらいつも僕の斜め後ろにいて支えてくれている。居ないと僕が困る。他の女性と居るといつも疲れる。僕は真剣に考えて告白している」
「私のような女性でいいのですか」
「あぁ、君が欲しい」
横田は目にいっぱい涙をためている。
「嬉しいです。私は……社長が好きです。六年側に居て、かなわない事はわかっていたのですが、他の男性からのプロポーズはお断りしてきました。だから仕事場が好きでした」
「ありがとう。僕で良かったら恋人として付き合いたい」
「本当に、私で良いですか?」
「君でなければ、だめだ」
「はい、嬉しいです。よろしくお願いいたします」
「良かった! 土曜日も空けていてほしい。夜は君のマンションへ行ってもいいかな?」
「えぇッ……早い展開ですね……、分かりました」
「良かった!」
ワインで乾杯だ。
「土曜日は、婚約指輪を買いに行こうか」
「社長、早いです。私を知ってから考えましょう」
「いや、よく知っている」
「僕は、君を逃がしていたらと思うと怖い」