重荷を下ろせた、子供達

近藤さんの結婚式も終わり、俊さんが、

「来週、京都に行かないか」

「何か用事が有るの?」

「君の着物が欲しい」

「えっ、どういう事?」

「僕が、ゆりに着物を買ってあげたい。僕が買った着物に袖を通してほしい。僕の着物も君のタンスに加えてほしい。正月や二人で出かけるパーティーに着てほしい」

「ありがとう。嬉しいです。喜んで京都に行かせて下さい」

次の土曜日、京都へ出かけた。

「山本さんに電話して会いに行こうか」

「ええ、いいですね」

先日、京都に行く予定を話していたそうだ。山本さんに電話。

「山本さん、今井です。御無沙汰しています。今、京都に向かっています。時間が合えばお会いしに行きたいのですが、お忙しいでしょうか?」

「ぜひ、ぜひ、お立ち寄り下さい。待っています」

「二時頃には着きます。お店にお訪ねいたします」

新幹線で駅弁やお菓子を買って、小旅行みたいで楽しい。京都の中心街に立派なビルに老舗のお店と上が本社。

「今日は、二時で約束の今井と申します。山本社長はいらっしゃいますか」

と俊さん。お店に入ると、一斉に私をみんなが見ている。そして一瞬手が止まった。「あれ」と思った。どうしたんだろう。ケースの商品を見て、美味しそうなので、聞こうと思って、

「あのお菓子を見せてください」

と顔を上げたら何故かその女性は目にいっぱい涙があふれている。私と俊さんはびっくりした。

「どうなさいましたか?」

「いえ、すみません。このあずきコンフィですね」

秘書らしき方が来て、

「あっ!……」

と声を上げた。やはり私を見て一瞬固まった。何かしら私を見て皆さん同じ行動をしている。

「すみません。今井様どうぞ、こちらへ」

エレベーターで十階社長室へ。

「今井さん、ゆりさん、ようこそいらっしゃいました」

「社長……」

「前に社員旅行の視察の途中で君をおいて、急用と言って、僕一人で帰った事があっただろう。奥様を見つけて追っかけたんだ」

「ああーそう言う事だったのですね」

「優斗と彩香を呼んでくれないか」

「はい」

「今井さん、ゆりさん驚いたでしょう。ゆりさんが十年前に亡くなった妻に似ているのです。社員もびっくりしたのでしょう」

「そうでしたか。社員の方がゆりを見て、一瞬、手が止まるのです。特にショーケースの中の方は涙を浮かべていました」

「ああー、妻の妹です」