近藤さん編
今日は今井夫婦が宿泊予定だ。
夜は十四階のラウンジで飲む約束だ。ゆりワールドが聞けると思うと楽しみだ。早目に仕事を切り上げよう、秘書の横田に、
「十九時に十四階のラウンジを予約してほしい。僕と今井夫婦と三人だ。よろしく」
「わかりました」
昼間はブティックでたくさん買い物をしてくれたんだな。七時前だが、レストラン行って、邪魔してみるか。レストランに行くと入口で店長が、
「いらっしゃいませ。社長、今井社長さん楽しそうです。ず~っと笑っているんです。あんなに笑う方でしたか?」
「奥さんのせいでしょう。面白い方だからな。僕も奥さんと一緒だと笑いっぱなしだよ」
今井を見るとゆりさんを見て幸せそうにニタニタと笑っている。
「今井、いい年の男が奥さんを前にニタニタか」
「おお~近藤。うらやましいだろう」
「ゆりさん、今井を甘やかさないで。先に上に行っているぞ」
と先に上がった。二人が来て、シャンパンで乾杯した。「僕も自分に合う女性がほしいな」ゆりさんが突然、「近藤さん身近にいますよ。あげまんが」
今井はずっこけ、僕はワインを吹き出しそうになる。
「どうした急に?」
今井。
「近藤さんは見えていないようだから。身近にいると思いますよ。明日から前後、左右見てください。死角で見えていないと思います。近藤さん、私がおまじないをしましょうか?」
何を言っているのか理解不能だが、ゆりワールド全開だ。
「ゆりさん、お願いいたします」
今井が小さい声で、
「こらえろよ」
と助言。
「さぁ、近藤さん。今から女性へのいやらしい欲望を無くします。目を閉じて私の方を向いてください」
ゆりさんに体を向けた。
「近藤さん、あなたは今まで美人さん、スタイルのいい女性、おっぱいの大きい女性、たくさんの女性と枕を共にしてきたと思います」
吹き出しそう。さっき今井が「こらえろよ」と言っていた意味が分かった。
「どんな女性と枕を共にしても最後は……出した後(声が小さい)はどうでしたでしょうか? 朝まで抱いて寝たいと思った方はいましたか? 女性が側に居ても疲れない、気にならない女性が近藤さんにとっての、あげまんです。身近にいます。さぁ、近藤さん、人生を共に過ごせる女性を探す旅に出ます。ハイ! 目を開けて」
とおまじない終了。何度か吹き出しそうだったがこらえた。あれ、気持ちが軽くなった。不思議だ。明日から楽しみ。僕の女神が近くにいるそうだ。
九時頃、今井夫婦は部屋に帰って行った。うらやましい夫婦だ。今井が幸せそうで本当に良かった。今日から観察だ。朝、いつものように出勤。いつもの社員。
「ちがうなぁ」
午後、横田に、
「午後の予定は?」
「はい、二時に三寄商会社長来社予定、四時、前牛建設専務来社予定です」