小学校の頃、誰かが私に『もらい子』と呟く声を聴いたことがあるような気がします。直接言われてはいないので、どんな状況だったのか定かではありません。

小学校3年生の頃でした。校庭の中庭で友達みんなと相撲をして遊んでいました。何人か勝ち抜いて、いつも互角の勝負をしている友達と当たりました。互角といっても彼はクラスでも学年でも一番強かったので、勝負ではほとんど負けていました。

でも子ども心に勝負がつくまでは互角だという自信がありました。お互い力を認め合っていたことも事実です。その日も捨て身の振り回し投げで、同体取り直しと思った瞬間に記憶が飛びました。

記憶が戻ったのは友達数人に手や足を引っ張られて運ばれ、職員室の引き戸のレールが背中に当たった時です。そこからまた先の記憶はありません。

再び気づいたのは、当時の小学校にあった宿直室に寝かされていた時でした。木枠の窓が開け放たれ、青空をぼっと眺めていました。相撲で倒れた時に、頭を大きな石にぶつけ気を失ったと後で知りました。

広い空と漂う雲を見ながら横になっていると、だんだん気持ちが悪くなってきました。ちょうど先生が様子を見に来てくれたのと同時に、嘔吐し始めました。先生もただ事ではないと思われたのか、いったんは出ていかれましたがすぐ戻ってこられました。

「病院に連れていく」

先生は命令口調でした。その先生は『げんこつ先生』と呼ばれていて、私たち子どもからは怖がられていたのですが、それでなくても逆らえるような状況ではありません。嫌々、自転車の後ろに乗せられました。

「落ちないようにしがみついていろ」