孝雄からのメール
三月十四日(木)
JRの駅から電話があって、真奈美の定期券を駅で預かっていると連絡がありました。本日までその駅で保管し、明日以降は別の駅での保管になるそうです。受け取るのに本人確認書類が必要だそうです。独りで死ぬほど苦しいです。妻でいてほしい。争いたくない。ずっと、この孝雄のことを想って信じてください。
――と、最初はこんなふうに、必要連絡を兼ねてのメールだったのだが、その後も何かにかこつけて言い訳しながら、相変わらず同じような内容のメールを送ってくるようになった。以前のように、ほぼ毎日というわけではなく、多少、日にちが空くようにはなったけど……。
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三月十九日(火)
今日は、大切な結婚記念日だから、メールを許してください。景子がいなくなって、生きがいをなくして、苦しくて死にそうな毎日です。今まで自分勝手だったと、ものすごく反省してる。一緒にいる間も、このままじゃいけない、早く仲直りしないといけないと、いつも考えていたのに、伝えることができずにごめんなさい。
独りぼっちになって、家族の絆よりも大切なものは、何もないと痛感しています。一日中、景子のことばかり考えています。もう一度やり直してもらいたいです。後悔だけが残る人生になってしまわないように、これから景子を一生妻として大切にしていきたいです。
今まで言ってなかったけれど、出かける時は、景子にもらったブランド物の財布や定期入れがお守りだと、ずっと思ってたんだよ。娘たちの声も聞きたいです。どんなふうに思われていても、父親だから。すごく会いたいです。もう一度やり直したいです。力を合わせて、幸せな家庭をつくりたいです。
でも……本当は、絶対嫌だったけど、もうやむを得ないから、先ほど弁護士に依頼してきました。だけど、どうなっても景子を愛して、信じてます。
三月二十二日(金)
メールしてごめんなさい。景子ちゃんとこんなふうになって、苦しくて、辛くて、気が変になりそうです。景子ちゃんと話がしたいです。もう本当に耐えられないです。景子ちゃん、お願いします。