何かがいつもと違う気がした。
(昨日は普通に話していたのに……。それにしても、普段なら病院も、まずは私に電話してくるのに、こういう時は、やっぱり嫁ではなくて息子に最初に知らせるものなんやなぁ……)
多少がっかりしながらも、もう少しの間頼む、頑張ってて、せめて私が着くまでは――などと気持ちはあせるが、病院とは逆方向に向かっている。この事態に、「駅に行かないで、このまま病院へ行こうか」と言う佳奈美をなだめつつ、彼女を駅まで送ったその足で、私はすぐに病院をめざした。
その間、幾度となく孝雄に電話をかけたり、メールを送ったりしたのだが、まったく反応がない。かなり危ない状態のようだし、一刻も早く孝雄に知らせなければと、会社にも電話をしてみたら、「本日は終日外出の予定で戻りません」とのことだった。
(明日帰るってメールにあったけど、会社で仕事するんじゃないんだ……)
病室に着くと、義母は人工呼吸器をつけられて目を閉じていた。
「お義母さん、来たよ。しんどいなぁ……」
そう話しかけながら手を握ると、かすかに握り返してくれた気がした。
間もなく先生が来られて、カンファレンスルームへ誘いざなわれる。もう覚悟はできていた。私はその説明を淡々(たんたん)と聞いて、ふたたび病室に戻った。