支柱の上端には木の枝の部分が股になって残されています。この股のところにローブがかけてあり、緩く結ばれています。ハエやアブが寄ってくると、ハナは尻尾を振ってたたいたり、大きな耳をパタパタと揺らせたりして風を起こして虫を追い払っています。
「牛は怖いから近づいたらダメだよ」とおじいさんに言われてきました。
そういうときはいつも、「時々、首を振るからね。そのときにあの牛の角に引っかけられると、大ケガをするからね。牛は後ろも危ないよ。不意に蹴ることがあるからね」と注意されていました。
「つながれているときは、横には行ってもいいですか」と尋ねると、おじいさんは
「横は柵があるから大丈夫だよ」と笑いました。
そこで、純二はハナの横の柵から手を出して恐る恐るお腹を触ってみました。ゴワゴワの黒い毛で覆われたハナの大きなお腹は、硬く張ってつるつるです。
毎日のように、おじいさんか吉田さんが牛用の硬いブラシで、首から背中、お腹からおしりまで、ゴシゴシと擦ってあげると、尻尾を振って気持ち良さそうにしていたのです。しかし、角のある頭と顔はおじいさんしか触りません。
ヤギの出産
おじいさんのところでは、ヤギも飼われていました。使用人の吉田さんが、「ヤギが発情しました」と報告に来ました。
おじいさんは直ぐに、「連絡しておくから、種付け所に連れて行って」と指示しました。
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