そうかと半信半疑だったのは近所の情報通だと自称するおばちゃんだった。

それから何人かに話を聞いたがこれといった情報は得られなかった。地方だからと言っても、近隣の住民との人づきあいがべったりというわけではない。

とりあえず、ある程度聞きたいことは聞いていたので、あとは他の捜査員に引き継いだ。すると行沢から連絡が来た。どうやら野口先生の妻である野口麗奈と連絡がついて、先生の搬送された病院に向かっていると言うのだ。藤堂も事情聴取のため病院へ向かった。

市内の総合病院で病床数も市内で三つの指に入るほどの大きな病院だった。病院に着くとさてどうやって行沢と連絡を取ろうかと考えていたのだが、その必要はなさそうだった。

病院の受付が騒がしい。女性が行沢に縋りつくように泣いていた。行沢が勢いに負けている。いつも完璧人間みたいに見える男だから、面白い。

写真でも撮ろうかとポケットをまさぐったところで、行沢が藤堂を見つけてしまった。その顔にはいるんなら助けてくださいよと書かれている。

藤堂はため息をついて女性を行沢から引きはがし、行沢から話を聞く。先に女性と二人で医師から状況を聞いていたのだという。

「野口麗奈さんですね」

女性は首肯した。

「今、病院に一部屋借りたのでそちらにご案内しますから」

行沢は迷惑そうに乱れた襟を直していた。

【前回の記事を読む】「ええ、火だるまになった人に他の人たちが消火器を向けて火を消そうとしていました」

 

【注目記事】あの日深夜に主人の部屋での出来事があってから気持ちが揺らぎ、つい聞き耳を…

【人気記事】ある日突然の呼び出し。一般社員には生涯縁のない本社人事部に足を踏み入れると…