その中には四人の男が中華料理を食べている写真、芸人のような若い男が写った写真も有る。もう一枚隠し撮りしたような写真は目つきの鋭い男が隣の男と話している写真で、反対側に芸人らしき男が座って、じっと二人を見つめている。

他の内ポケットには、電車で見た男が写った首から下げるICチップ付きIDカードが入っていたが、写真以外何の記載も無い。

一方、ブリーフケース内側片面に会社名とニューヨーク事務所の住所が書かれたシールが貼り付けてある。

浩は此れでやっと電車の中に居た男の繋がりが見つかったと思い、何故かホッとした。

改めて、ブリーフケースの中を隅々まで探したが発信機らしき物は見つけられなかった。

浩は、見つからなかったと言ってこのまま何もしない訳にはいかなかった。

「届け物です!」

と言う声がよみがえり、犯罪を犯した恐怖が押し寄せて来た。

間違いなく、このブリーフケースかチェーンの何処かへ、常に存在を示す何かが有り、それがいつまでも男を呼ぶに違いない! 一体どうしたら……と浩は必死になって考えた。

その時、ふと『そうだ! リレーアタックだ!』と思った。

以前テレビ報道で、車の盗難に今はリレーアタックが使われ、大きな社会問題になっている! と話すシーンを思い出した。

その時見た、リレーアタック防止策をすれば良い! 

その時は、電波を発する車のキーを金属箱の中へ閉じ込め、電波が外へ漏れ出ないようにしていた。

浩は、直ぐ押し入れからアルミ製のアタッシュケースを取り出した。