俳句・短歌 俳句 コンテスト大賞作品 2024.02.21 句集『バーの二階で』より三句 バーの二階で 【第5回】 田中 龍太 幻冬舎グループ主催 『短歌・俳句コンテスト』大賞受賞作品 日本の四季を彩った、“今”を表現する一冊 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 コロナ禍以降、読書を楽しむ機会が増えた人も多いのではないでしょうか? 本書は、その間に編まれた句集です。※本記事は、田中龍太氏の書籍『バーの二階で』(幻冬舎ルネッサンス)より、一部抜粋・編集したものです。 春の景 謹呈の 花の便りに 筆重く つちふるや 湯船に沈む 手の白さ 黄砂降る 岩波文庫 伏せしまま 【前回の記事を読む】句集『バーの二階で』より三句
小説 『約束のアンブレラ』 【新連載】 由野 寿和 ずぶ濡れのまま仁王立ちしている少女――「しずく」…今にも消えそうな声でそう少女は言った 二〇〇三年の年末。猛烈な雨が、差しているビニール傘を氷のように叩きつけている。静岡県藤市にある藤山を局地的な大雨が襲っていた。静岡県警の鳥谷(とりたに)は手に持っていた新聞を口でくわえると、慌ててしゃがみ込んだ。泥でぬかるんだ足元に、大量の水が靴を侵食する感覚が襲った。「こんな雨の中、こんなところにいたら風邪をひいてしまう。ここは危険な場所だ。お嬢さん、名前は?」少女はずぶ濡れのままその場に仁王…
小説 『魂業石』 【第17回】 内海 七綺 「さて、なにをして遊ぼうか。可愛いお嬢さん」後ろから口を塞がれ空き家に引っ張り込まれた。その手にはナイフが握られていた。 「ごめん、その日は会議があるから休めないんだ。その次の週じゃだめ?」少し意地悪をしたくなって、雪子は首をかしげた。「えぇ、どうしよう。その日以外はしばらく旦那さん、出かける予定ないんだ。ご飯作ってあげないとだから、旅行は難しいかも」オロオロしながら、愛弓が早口でまくし立てる。「へぇ、そっかぁ」あの太った冴えない薄毛旦那にそこまで尽くせるなんて、信じられない。本当は背が高くて男前な伸親のような男が…