第六章 タレントマネジメント
チームメイトにもう一つの障がいをカミングアウト
高次脳機能障害の症状が激しく現れる前までは、アンプティサッカーチームに所属して活動していた。
異変が起こってからは、日常生活も難しく休みがちになっていたが、夫のリハビリのためにもアンプティサッカーの活動は、どうしても再開させたかった。
ただ、このまま高次脳機能障害のことをチームメイトに隠したまま活動することが良いとは思えなかった。というのも、
・遅刻をする
・忘れ物をする
・準備をするのが遅い
これらは高次脳機能障害の症状によって引き起こされていたことがわかり、理解が得られないと、管理が悪いとか、性格が悪いと勘違いされやすかった。このことをチームメイトが理解してくれるかわからなかったけど、これから乗り越えていくためにも、高次脳機能障害のカミングアウトが必要だと思った。
「俺は、このことをチームメイトに言いたくない」
「なんで?」
「脳に障がいがあるって言ったら、みんなどんな反応するか……」
「障がい者ばかりいて、医療従事者がいるチームだよ。大丈夫だよ」
「なんて言っていいかわからないし。自分ではその症状はわからないから書けないよ」
「いいよ。私が書くから、それを送ってよ」
私が書いた内容を夫からチーム全員に一斉にLINEすることにした。
アフィーレ広島AFCの皆さんへ
いつもお世話になります。谷口の妻です。きょうは、ご報告があり、私が書いたものを谷口から送ってもらいました。
十五年前の交通事故で診てもらった総合病院の脳神経外科を二人で受診してきました。谷口のこれまでの不思議な?問題ある?行動のメモをしていたので、それを元に一つずつお話をしてきました。
その結果、事故の時の脳挫傷の影響(右側頭葉および左頭頂葉の挫傷)から高次脳機能障害と診断されました。
これまでの右足切断の障がいに加えて、今後、障がいの等級関係にも影響してくると思います。
状況としては。叱責されると放心状態になる、呂律が回らない、ふらふらする、急に眠ってしまうなど、極度のストレスにより出てくる症状があります。また、飲酒や残業、睡眠不足等で、イライラや暴言等の迷惑行為につながることがわかり、根本的に断酒や残業禁止等の制限が加わることになりました。
二年前、私が一緒にアフィーレ広島AFCの練習に行くようになって気がついたのですが、時間が守れず遅刻をしていたと思います。当時は、とにかく遅刻をしないように、朝から、揉めながらも引っ張っていっていました。今では、一人で行くことで、逆に早過ぎて到着していることも障がいの影響と言われました。
当時は、強く指導される方がいらっしゃったので、無意識に遅刻していたんでしょうか。一方、好きなことは遅れないようで、環境に適応できるようです(今はサッカーが楽しいということですね!)。
谷口は、注意されてもそれを忘れて繰り返してしまうので、学習できる子どもよりも難しいとも言われました。