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営業所にはぼくのような配達要員もいれば仕分け担当の人もいて、その仕分け担当の人が朝早くから作業してカートに荷物を入れておいてくれたのだ。

ぼくはもうそこそこいっぱしなので、積まれた高さでだいたいその日の荷物量は分かる。カートの半分以上積まれてあるから、今日は五十を超えているだろう。ぼくの配達範囲は地元に限定してもらっているため、多くても六十個ほどとなる。

毎朝顔を合わせる品川さん(以前ぼくが居候していた例の同業者だ)などは、かなりのベテランなので、毎日八十個以上配達していて、稼ぎまくっている。彼はすでに作業を開始しており、自分の身長並に高く積まれた荷物を手際よく車に積み込んでいた。   

軽ワンボックスのハッチを開き、ぼくも積み込みを開始した。荷物に付いている伝票から配達票だけを引っぱり出し、番地を目安にしてだいたいの配達順序を考え、車に荷物を積み込んでいくという作業だ。

これをうまくやらないと、あっちをほじくりこっちをほじくりしながらの配達となるので、効率が悪くなる。バイトを始めた当初のぼくがまさにそれで、適当に詰め込んだものだから、配達先の家の前まで来たはいいが、荷物が見当たらずほじくり返して探し出しているうち時間ばかりが過ぎ、あまりのうまくいかなさに泣きたくなったものだ。

殊にぼくを追い詰めたのが、時間指定配達というやつだ。午前中という指定に丸が付けてあれば、必ず午前中に配達を完了しなければならない。

それなのに効率無視の配達をしていたから、タイムリミットが近付き、とにかく午前中指定の荷物だけを引っぱり出し、ぎりぎりいっぱいで届けるという羽目になり、配達先の会社の人に、「今日は馬鹿に遅いねえ。困るよ、これじゃあ」などと嫌味を言われたこともある。

それ以来ぼくは、まずは午前中指定の物からさっさと配ってしまい、その後指定のない荷物を配るというやり方を採用することとなった。しかしこれだと同じルートを再び巡り直すなど効率が悪かった。今ではすっかり慣れてしまったので、みんないっしょくたにしてルート通りに配達していても、午前中にだいたい配達は完了する。

今日の荷物もお歳暮関係が多いようだ。中身を見なくても、この重さとサイズは缶ビールセット、こっちはサラダ油セット、この軽さはお菓子セットか、なんてなんとなく分かる。地域特産鍋セットなど、伝票を見なければ中身が分からないものもある。

もちろん一般の荷物もたくさんあり、通販の商品や仕送りの米や野菜、会社で使う書類や部材など、多種多様だ。車に積み込むごとにカート内の荷物は減り、下に隠れていた物が現れてくる。