序章 強い人、強い会社とは
突然の強制捜査
2021年4月23日金曜日朝7時。普段通りパジャマのままで朝ご飯を準備中、突然インターフォンから「ジンさんの家ですか」という声が聞こえてきました。
「はい、そうです」と返事をすると、「ドアを開けなさい」という声がしました。
いままで日本で暮らしてきて用事を言わずに、いきなり「ドアを開けなさい」などと言われることは全くなかったので、いぶかしく思ってドアを開けました。
すると、知らない男性がバタバタと入ってきて「令状」を見せてくれました。そして「家宅捜査をする」と言われました。「えー、なんで」と私は大変びっくりしました。
令状をよく見ると、知り合いの会社が「外国為替法」および「外国貿易法」「関税法」に違反したとされており、知り合いは被疑者で、私も被疑者に関連した人物ということで、この事件に巻き込まれました。
具体的には、数年前、輸出禁止のリストにある中国の研究所に半導体を輸出したということで裁判所から捜査令状を出されたわけです。
家の玄関で私はパジャマのままで写真を撮られて、ボディチェックもされました。それから警官8名が家の中に入ってきて、タンスやベッドや本棚はもちろん、洗濯機や冷蔵庫や台所や浴室やトイレ等を全部調べ、家中をひっくり返して捜査しました。
携帯電話はすぐに没収され、トイレに行っても警官が付いてきて監視されました。外部への連絡は全部遮断されました。
この日私はお客様との打ち合わせの約束があり、会社に連絡しようとしましたが、家の固定電話しか使用できませんでした。電話で社員と通話して、会社も同じ時間に家宅捜査されている途中だとわかりました。これもまた大変びっくりしました。
捜査途中、私は捜査員に「家から半導体の三つの字が出たら今私を逮捕してもいいですよ」と怒りをぶつけましたが、リーダーの警官は「私たちは令状を持っているから法律違反ではない」と言います。