丸田は、近づくと、男が手に持っていた残りの二~三千円をむしり取りながら、
「行け!」
と静かな声で言い睨みつけた。二人は、丸田を睨みながら外へヨロヨロと出て行った。
丸田は、お金をおばさんに渡すと直ぐ席に戻り、少し冷えていたが未だ十分温かい残したタンメンを美味しそうに食べだした。
店の中は、おばさんの後片づけをする音が響き、次第に静かに成って行った。
おばさんと調理人が丸田へ近づき、頭を下げながら、
「すみませんでした、有難うございます」
とお礼を言い、割れた食器や落ちた麺を処分し、他の客もそれぞれ落ち着きを取り戻したがそれとなく周りを見つめながら呆然とした顔をしている。
おばさんは、開けたままの引き戸を閉めに戸口へ立ち、出て行った二人の行方を見つめていた。