第3章 ストレスは、たぶんあなた自身が作り出している
① 30歳にとってのストレスの正体
30代の心には、「焦り」という名のストレスが潜んでいる
オーバー30の皆さんにとって今もっともストレスだと感じていることは、どんなことでしょうか。私の30代は、今思い返せば、ストレスと波乱に満ち満ちていました。
仕事に関しては、大好きな仕事にも出合えて、忙しいながらも充実したビジネスライフを送っていました。コップからストレスという名の水が溢れていても、気がつかないほど、よく言えば、頑張り屋さんでした。これは、決して褒められたことではありません。
一方、プライベートでは、最愛の母との別れがありました。交際していた男性からのプロポーズには、結婚と仕事を天秤にかけて、私から別れを切り出しました。にもかかわらず、ほどなく、生き甲斐だった仕事とも「さようなら」して、第二の職業を目指すために会社を飛び出し、再び、学生になるという無謀な選択をしています。
ただ若かっただけなのか、オーバー30という年齢に追い詰められていたのか、実際のところは、今もよく分かりません。少なくとも、30歳を過ぎ、この歳で何かをやらなければ後はない、という「焦り」というストレスに直面していたのだと思います。
先輩が教えてくれた言葉に影響を受け、人生にターニングポイントがあるとしたら、今しかない、と考えたことだけは覚えています。本当にそれで良かったのか、人生に正解はありませんが、30代に、私は多くのストレスを自分で作って、独りで、もがいていたことは事実です。
リスタート、もう後へは引けない
ビジネスパーソンの宿命で、数年ごとに人事異動があります。私もいずれ、大好きだった職場からは異動になることは分かっていました。専門職でない私はこれから先、職業人として仕事を続けて生きていくためには、なにか手に職が必要だと考えるようにもなっていましたが、それは、会社にいたのでは叶わない望みでした。
そんなある日のこと、毎日のように顔を合わせていた取引先のAさんが、自死するという信じがたい出来事を経験しました。いつも通りの会話をして笑顔で分かれた金曜日。その週末の出来事です。愕然としました。
あの日、私になにかできることは、なかったのだろうか、Aさんの異変には、なにも気付けなかった自分を責めました。しかしどうすることもできません。やりきれない気持ちを引きずりました。
人は、他人には見えていないところで、深い苦しみや悲しみを抱えていることを、現実のものとして突きつけられた瞬間でした。私には、それまでに、まったく考え及ばなかった心の領域でした。また同じ頃、社内では、うつ病で休職している人が身近にいたことなども重なり、これからは、働く人の心の健康を考える時代が、必ず来るに違いないと感じました。
そんな時代も追い風に、折しも、臨床心理士という資格ができて、世の中で話題になっていたことも、気持ちを動かされた理由です。私は、ビジネスパーソンとして日々の職場で感じてきたストレスや、先のやり切れない体験などを通して考えさせられたことを活かし、将来は、臨床心理学に関する仕事に就きたいと思うようになりました。
まさに、ゼロからのスタートです。自分で決めたこととはいえ、将来については、なんの保証もありません。希望に満ちあふれていたリスタートというよりは、もう後へは引けないプレッシャーで、自分を追い込んでいました。