「私の両親が経営している本屋を閉店することになったの。今、本屋不況なのよ。今の時代、本は、どんどん電子書籍化して、紙の本が売れなくなっているの。それで私の家も、店を閉じることになったの」

「それは、大事件じゃない」私は驚いた。

「そうなのよ。だから、私、大学進学は諦めて、どこかの企業に就職しようかなと思っているの。奨学金を得て進学するっていう方法もあるんだけれどもね、私が進学できる大学のレベルは、たかが知れているでしょ。ムリして奨学金を借りてまで大学進学する意味は、ないなと思っているの」

「二人とも、今、人生の重大な岐路に立っているというわけね」

「どうしよう。本当に悩んじゃう」

「私は、ほぼ就職することに決めている。何しろ生活しなくちゃいけないから。それに人生における、いいことも、良くないことも、何でも小説化できると思っているから」

「ユミは、何でも前向きにとらえてエライ」私は言った。

「私も、思い切って結婚しちゃおうかなあ」

私は大学進学だけが人生じゃないと思った。むしろ大学進学なんて平凡過ぎて、つまらないものなのかもしれない。自分の人生のことなんだから、自分が主人公になって、どうすべきか悩むだけ悩めばいいと思った。

こう言う私は冷たいように感じられるかもしれないけれど、十年経って考えた時、あの時、あのように判断して良かったと思う時が、必ず来ると思った。

「私は就職の道を選択すると思う。確かに大学進学だけが人生じゃないと思ってる」

「いずれにしても、高校生活は、高校生らしくちゃんと過ごそうね。勉強したり、友情を育んだり」

私は言った。

【前回の記事を読む】昼休みの女子学生三人。将来の夢と恋の話が止まらない、大切な時間。