「手紙って何?」

「英語の手紙です」

女はとても優しい顔になった。

「焼きイモ屋のお兄ちゃんが読んでくれるわよ。あの人、海軍兵学校を出た大尉だったんだもの。すらすら読んでくれるわよ」

「どこにいるの。その人」

「屋台だから場所決まっちゃいないんだけど、よくいるのは柏木神社の一本手前の角のデンスケ賭博の近所よ。はんてん着て、縄で鉢巻きしているからすぐわかるわ」

 

「ちゃんとお金を持っているのかい」

元海軍大尉の焼きイモ屋は無表情にぼくを見て言った。

「俺は商売でやってるんだ。ただじゃ読まないよ」

「おじさんは焼きイモ屋だろ。手紙屋なんて看板出してないじゃないか」

ぼくはむきになって言った。

大尉はニヤリと笑った。

「看板なんか出さなくたって、お客はちゃんと来るんだ。聞くけど君は看板を見て来たのか。違うだろう」

「……」

「まあ仕様がない。子供だから金は取れないものな。読んでやるよ。しかし、ただで人に物をやらせようという根性が気に入らない。お客に渡す焼きイモを包むのを三十分手伝っていけ。その間に読んでやる」

「いいとも簡単だ」

ぼくは喜んで言った。

大尉はパラパラと手紙をめくった。それから少し難しい顔をして一枚目に戻った。それからじっと読んでいて急に言った。