誰に読んでもらったらいいのか。翌日の授業をうわの空で聞きながらぼくはそのことばかり考えていた。何が書いてあるのか見当もつかない以上、両親に見せるわけにはいかなかった。学校の先生にも何と説明していいかわからないし、内容によっては大変なことになると思った。学校の先生だってMPからぼくをかばうような危険なことは決してするわけがなく、それどころか通報でもされれば全てが終わりだった。ぼくはポケットの中の鋲…
[連載]鋲【文庫改訂版】
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小説『鋲【文庫改訂版】』【最終回】菜津川 久
怪我をさせた女の子から、鋲の入った英語の手紙が。ヤミ市の手紙屋に読んでもらうと…
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小説『鋲【文庫改訂版】』【第7回】菜津川 久
復讐のために仕掛けたロープ。標的のアメリカ人の女の子がとうとうやってきた…。
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小説『鋲【文庫改訂版】』【第6回】菜津川 久
ラジオが流す『真相』は日々変わる。目の前で妹が死んだということだけが確かだった。
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小説『鋲【文庫改訂版】』【第5回】菜津川 久
飛行機と機関銃の轟音…“妹を死なせた”ぼくが母に伝えた言葉
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小説『鋲【文庫改訂版】』【第4回】菜津川 久
昼休み、警戒警報。「下校せよ」の指示で、妹を連れて走るも…
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小説『鋲【文庫改訂版】』【第3回】菜津川 久
え、立ち退き!? 「焼けたと思えばいいんじゃないですか」焼け残ったこの家を米兵が目につけて
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小説『鋲【文庫改訂版】』【第2回】菜津川 久
「欲しい奴いるか、この指触れ」終業後、クラスメートを集めて…
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小説『鋲【文庫改訂版】』【新連載】菜津川 久
戦後まもない日本「平和な国民として生まれ変わるのです」…先生は得意気に声を張り上げた