お母さんの煮しめ
みんなの好きな食べ物ってなーに?
「ハンバーグ」
「カレーライス!」
「からあげ~」
「わたし、スパゲッティ」
「あげぱん!」
「クリームシチュー!」
クリームシチューもいいね。わたしも好き。でも、わたしが好きな食べ物はね、お母さんが作る煮しめ。
みんなは煮しめって知ってる? 煮しめっていうのは、こんにゃく、れんこん、人参、さといも、しいたけ、たけのこ、ちくわ、昆布、あぶらあげなどを、甘辛く煮たものを煮しめっていうんだよ。日本の代表的な家庭料理の一つなの。
うちではお正月、お盆、お祝い事、運動会など、色んな行事の時にお母さんが作ってくれた。うちのお母さんの作る煮しめは、他の煮しめとは違う。全体的に色が茶色くて濃い。決して華やかではない。でも、味がよく染みていてとっても美味しい。わたしは、お母さんの作る煮しめが大好き。
〈秋〉
今日は小学校の運動会。天気は曇り。
朝、お母さんは、早起きをしてお弁当を作っていた。
「おはよう、お母さん」
「おはよう、れいちゃん」
わたしは、まだ眠たい中、台所へ行くと、そこにはわたしの大好きな煮しめがあった。
「ひゃぁ、煮しめだ!」
わたしは、大好きな煮しめを見ておもわず目が覚めた。
「今日は運動会だから、張り切ってたくさん作ったわ」
お母さんは、笑顔でそう言った。
「やったぁ~。お母さん、ありがとう」
すると、そこへ一本の電話がなった。
「はい、もしもし……」と、お母さんが慌てて電話に出た。
わたしは、煮しめの匂いを嗅ぐと、ルンルン気分で外を眺めに行った。だが、窓を開けて外を見ると、雨がザーザーと降っていた。電話を終えたお母さんがやってきて言った。
「れいちゃん、今日の運動会、雨で中止だって……。今、先生から電話があったわ。残念だね……」
けれど、わたしはそれほど残念に思わなかった。だって今日は、お母さんが作った大好きな煮しめが食べられるからね。