今日の運動会は、雨で中止になり、学校で授業となった。そして、お昼は給食ではなく、お弁当となった。
みんな、午前の授業は、全然元気がなかった。だけど、給食の時間になると、自然といつものニコニコなみんなに戻っていた。しかも、今日はお弁当なので、みんないつもとは違ってワクワクもしていた。もちろん、わたしも。
みんなは、席をくっつけ、それぞれお弁当を机の上に用意する。
さぁ、今からみんなが楽しみにしているお弁当! みんなは、お弁当箱のフタを開け、ワクワクしながら中をのぞく。
(なにかな、なにかな~)
「わぁ、からあげだ!」と、喜ぶかいせいくん。
「わたしのはサンドイッチだぁ~」と、続けて喜ぶゆきちゃん。
「えーいいなー、俺なんておにぎりだよ」と、ちょっとガッカリなひろとくん。
「オレはハンバーグだぞぉ~」と、自慢げなかんたくん。
「やったー! にしめだ~!」と、中身がわかっていても嬉しいわたし。
すると
「えっ、何それ?」
「ねぇねぇ、何なに?」
「煮しめ? はじめて聞いた」
「なんか、変な色……」
「なんかババくさくない?」
「れいちゃんって、いつもこんなものを食べているの?」
煮しめをあまり目にしたことがないのか、みんなは煮しめをじろじろと見つめた。みんな、はじめて見る煮しめに興味を示したというよりも、変なものを見たという感じの目をしていた。その変な目はわたしにも向いた。
「なんだぁ、このまずそうなものは。気持ちわるっ。お前って、こんな変なもんが好きなのかよ」と、かんたくんがからかう。
(煮しめって、みんな知らないの? お母さんの煮しめ、凄く美味しいのに。煮しめを好きなわたしって変なの?)
その後、わたしは、お弁当箱のフタでみんなの目を遮るようにしてコソコソ食べた。大好きなお母さんの煮しめ。なのに、心寂しかった。
帰りの会。先生からの連絡。
「明日は振替休日でしたが、今日の運動会が中止になったので、明日も授業になります」
「えぇ~」
「給食はでませんので、お弁当を忘れずに持ってきてください」
「はぁーい……」
がっかりしているみんなをおいて、わたしはすぐに家に帰った。
家に帰るやわたしは、すぐにお母さんに言った。
「お母さん、明日のお弁当はハンバーグにして!」
「えっ、ハンバーグがいいの? 煮しめもあるけど?」
「煮しめはもういい。ハンバーグにしてよ!」と、強く念を押した。
わたしは、みんなに合わせたかった。みんなと同じものに。みんなと同じ普通のものに。
そして恐れた。自分はみんなとどこか違うんじゃないか。普通ではないんじゃないか。変わっているんじゃないか。だが、わたしが一番恐れたのは孤独になってしまうことだった。