ドアの開く音がした。
オカンが買い物から帰ってきたのだろうと体を起こしかけると、それよりも先に、オカンが、
「昌之!」と呼んだ。
いつもの声のトーンとは違う。
見ると、オカンの後ろに、見知らぬ男性が、10人近くも立っていた(内女性1名)。
仰天した。
しかも出で立ちの怪しい者が大半だ。
一体何者?
強盗か?
いや人数多過ぎるやろ、しかも真っ昼間、うちは人通りの多い道路に面してもいる。
ソファーに座ったまま、まだぼんやりした寝起きの頭の中でぐるぐる考えていると、迷彩服上下姿の、白髪交じりの痩せた男性が、
「近畿厚生局麻薬捜査課の取締官である」と名乗り、声をかけてきた。
「大内昌之さん?」
「はい」
「何でここで寝てるの?」
「あ、いやちょっと体調が悪くて……」
「あのね、あなたは、指定成分を含んだサプリメントを輸入したの。だから調べさせてもらうよ、これは捜索令状」
と、書類を無造作に見せられた。