「最初はちょっと慣れないだろうけど、三枚フィンにトライしてみたらいいと思うよ。フィンの形状はいろいろなタイプがこの店には揃っているんだ。俺がヨッサンと相談して、これから玲子のサーフスタイルに合ったフィンを選んでやるから、俺が選んだ三枚フィンを、ここで新しいボードにセットしてもらうのがいいよ。玲子ほどのサーフィンの上級者なら、自分に合ったボードとフィンを使うのがいちばんさ。俺に任せておきな」

三枚フィンのサーフボードの中から、玲子は気に入った黄色のボードを手にする。圭はそのボードを手に持ってヨッサンと話を始め、自分が選んだ形状のフィンを勝手にそのボードにつけてもらおうとしている。玲子はそんな圭を見てほほ笑み、すべて任せている。

横に立って見ている玲子に圭が言う。

「この店に来る前、自転車で海まで行って見てきたら最高の波だった。玲子は車の中にウエットスーツを積んできているんだろう。俺も自分のボードを持ってくるよ。ここで着替えて待っていろ」

圭は店を飛び出していき、さっさと自転車にまたがり帰っていった。

一人になった玲子がヨッサンに頼む。

「着替えをしたいので、この店の更衣室を貸していただけますか?」

ヨッサンの「空いているから、使っていいよ」という返事で、玲子は車の中から水着とウエットスーツを取り出してきて、店の更衣室で着替え始める。

玲子が着替えをしている間、新しい三枚フィンの黄色いサーフボードが、外のデッキに立てかけられる。玲子はデッキの椅子に座って圭が戻ってくるのを待つ。

そこにボードを片手に抱え自転車に乗った圭がやってきて、玲子が座っているデッキの横で、大きな声をかける。

「玲子、その新しいボードで初乗りだ。前の海に行くぞ」

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