検査結果は、陽性(+)や陰性(−)で表されます。実際には便の中の血液量を測定し数値化しています。大腸がん検診として「便潜血検査」を用いる場合には、主にカットオフ値として100を基準に陽性/陰性を分けています。つまり血液が混じっていても数値が90なら検査上は陰性、また101なら陽性と判断されます。
陽性の場合には病変が認められる可能性が高く、2次検査の大腸内視鏡でがんの有無を確認する必要があります。またこの数値が500以上などと高い場合には、進行がんの存在する可能性が高くなります。そのため、便潜血の検査結果を受け取り次第、なるべく早く精密検査を受けることをお勧めします。
一方で、便潜血検査で陽性になったからといって、大腸がんとも言い切れないし、必ずしも消化管から出血しているとは断定できません。トイレでいきんだ際に肛門の皮膚が切れる切れ痔(裂肛(れっこう))で便に血が混じることがあるほか、女性では月経血が混入して陽性を示すこともあります。
しかし、便潜血で陽性が出た場合には大腸がんをはじめとする消化管の病気の可能性もあるため、大腸内視鏡検査による精密検査を受けることが大切です。
便潜血検査は、早期がんであろうと進行がんであろうと、大多数のなかからがんの可能性が高い人を見つけ出す検査です。ですから各自治体のなかの対象者や企業内の対象者の大勢のなかから大腸がんの可能性がある人を拾い上げる意味では非常に有用です。検査を受ける負担も少なくコストとそのメリットという意味でも有用です。ただ陽性になったときに早期がんではなく進行がんである可能性もあります。
この便潜血検査にも注意が必要です。それは「陰性=病気ではない」とは言い切れないところです。大腸内視鏡でポリープや早期がんなどが見つかった方からも「ドックの結果は陰性だったのに……」という言葉をよく聞きます。
つまり大腸がんがある場合でも、便潜血検査が陰性となることがあるため注意が必要ということです。
実際に当院で精密検査を受けられた方のなかにも便潜血検査が1年前まで陰性であったものの、翌年の検査で陽性となったために大腸内視鏡検査を受けた時すでに進行がんで見つかったという方もいらっしゃいます。
そういった点からは内視鏡検査に比べると、この便潜血検査は個々人すべての確実な早期発見には向いていない検査ともいえます。