おキュウリとこんにゃく問答

いつもは重苦しい療養室でも、時にはドジな私のしでかす珍事によって、その空気が一瞬にして明るくなることがあります。まあ、一服の清涼剤としてお読みください。ええっ、一服では済まないのでは……という声がどこぞから聞こえてくるような気がしますが、まあそうおっしゃらずに、どうぞお付き合いくださいませ。

『聞き損ないは言い手の不調法』と言う言葉をお聞きになったことがありますか。私はこの度全くその見本のようなことをしでかしてしまい、みなさんに笑われてしまいました。

このところいつも頂くばかりのわが家に、またまたおキュウリを数か所から頂いてしまいました。

これ自体はとても幸せなことです。でも、せっかく丹精込めて作られたものを、食べきれずに傷めてしまってはもったいないので、もしどこかでおキュウリを買われるのであればこれらをお持ち帰りいただきたいと、介護支援に来てくださっているヘルパーさんに聞いてみました。

「お宅ではおキュウリは余っていますか」と。

するとそのヘルパーさんは、「いえいえ、なかなか残りません。いつもカツカツなんです」と言われるのです。どうやら余っているようではなさそうなので、私はそれではちょうどよかったと思い、

「どうぞお持ち帰りくださいませんか」

と言うと、ヘルパーさんはおかしな顔をされたのです。

なんだか少しおかしいなとは思いつつも、私は、

「おキュウリは漬物にしても酢物にしても、またサラダに入れてもおいしいものですよね」

というと、このヘルパーさんはなおも一層怪訝な顔をして、しばらく私を黙って見つめておられました。

私は余っていないのであれば、今晩の献立の一品としてお役に立てたら嬉しいので、台所からおキュウリを持ってきました。するとそのヘルパーさんは、じいっとそのおキュウリを見ていたかと思うと、やがて吹き出してしまったのです。今度は私が???という顔をする番です。

その吹き出しの種明かしは……

ヘルパーさんは、私が「お給料が余っていませんか」と聞いたと思ったというのです。

持ち帰れと言われておかしいなという思いはしたけれども、漬けたり、酢の物にしたり

……と言われ、これは本当におかしいなと気づいたと言うのです。

は、は、は。これでは二人の頭の中を「?」がいくつも駆け巡っても不思議ではありません。久しぶりに療養室に笑いの渦ができました。

いつもとんでもないドジを平気でしでかす私の顔を、ベッドの上からじいっと見つめていた夫の顔が「またか」と言わんばかりに渋い笑い顔をしておりました。

お粗末な一席でした。トホホ。