さらに、将兵たちに対しても、簡単に動くことがないようにと厳重に注意して家に帰っていきました。しかし、重盛は、なぜか気持ちが収まることがなく、不安があったため、命令を出して兵を集めました。
「一大事がある。速やかに集まれ」
それを聞いた人々は、お互いに言います。
「落ち着き冷静な重盛公が、このように言うのだから必ず何かある」
そうして、皆は争って集まり、一夜にして二万の騎馬が集まりました。重盛は平家貞、平貞能に対して、父にこのように言わせました。
「法皇は父の考えを聞いて激怒して、重盛に詔して父を討たせようとするかもしれません。父がそれを知り、自ら命を絶つかもしれないことを恐れます。よって、二人を側に置いて守らせます。その時は重盛が身にかえて、君に対して父の命を請い願いますので安心してください」
しかし、清盛は大変、戸惑うことになります。そのことで重盛は泣いて言いました。
「父の間違いを救って、逆にその心を傷つけることになった。私の罪は大きい」
それから、自ら集まった兵を労い、全ての役をお止めになりました。