真面目にはやっているつもりだけれど、誇りに感じているわけでもなく、将来を誓い合った相手とともに酒屋を切り盛りしていこう、などという未来像も湧かない。個人経営の酒屋に未来はないと見切っているというか、シラけているというか。それで、「ああつまんね。酒屋なんかやるんじゃなかった」なんていう愚痴が出る。親父と喧嘩になる。
もちろん維持していこうという意志はあるから、親がやり出したこととはいえ、宅配のバイトをしたり、クリーニングの取次ぎをやったりと、本業以外のことにも力を入れている。ネットでの販売も始めてみようかと、計画していないわけでもない。
それでもその時、つまり商売が立ち行かなくなった時が来たら、それならそれでいいや、どこかで働けばいいや、といういい加減なところが満載であり、そんなことでいいのかと思わないではない。それを自らに問えば、もやもやしてしまって煮え切らない自分にうんざりするばかりなので、考えないようにしている。
あやことの将来に関しても同様であり、結婚も子作りも今のところ考えられないし、あやふやなまま放置していた。のほほんでいい、のほほんでいたい。ケ、セラセラ。
二十七にもなってこんなだから、しまいにあやことの仲も硬直し、会わない日が続いていた。車椅子の女を初めて見た時、ああいう馬鹿っぽい女を気ままに弄びたいと思ったのは、あやこという女の面倒くささに疲れていた、いや将来とまともに向き合うという面倒くささから逃れたかったからかもしれない。もちろん欲求不満もたぷたぷたまっていた。
のほほんとしていても、そこはまだ若い男子なので。