第二章 出会い

そんな二人を見比べながら、春彦はあることに気が付いた。一見、顔立ちも雰囲気も違うのに、二人はまるで同じ型から作られた人形のようだった。

この身長差は恐らく履いている靴のせいで、うなじから伸びた細い首や、そこから肩へのなんとも美しいライン、高めのウエストに続くヒップに、すらりと伸びた脚、一番個体差が出そうな華奢な足首でさえも余りにも似通っていて、その何もかもが春彦にそう思わせたのだった。

「約束だったのに! もういいよ。あのお店のサンドイッチとパフェのバイキングは別の日にする」

亜希子がふくれっ面の女の子をなだめながら、春彦を振り返った。

「待たせてごめんなさいね。この子は妹の郁子。今年二十歳になったばかり。昨年他界した父にべったりで、ボーイフレンドの一人もいなくて困っていたの。良かったら、お友達になってあげて」

先ほどとは打って変わって、郁子はにっこりと笑いながら春彦に会釈した。が、その次の瞬間には、また亜希子に向き直って何やら文句を言っていた。

「余計なこと言わないでよ!」

亜希子に文句をいう口調や仕草は、やはり二十歳とは思えなかった。この時の春彦にとって、郁子はまだ亜希子の妹でしかなかった。その後、どうやら『体育会系男子は肉だよね』という認識の元、どこかのステーキレストランで春彦は日替わりのビーフステーキを、女性陣は日替わりハンバーグステーキを食べた。

そのランチも、終盤に差し掛かった頃のことだった。

お互いに残したハンバーグのことで何やら言い合いをしている亜希子と郁子を、春彦はやれやれと見やった。わざとらしい咳払いをしてみせた春彦の表情は、真剣そのものだった。おもむろに残り物を自分の前に引き寄せたかと思えば、一つのプレートに几帳面に並べだした姿に戸惑うのも無理のないことだ。亜希子と郁子が顔を見合わせていると、そんな二人を見る春彦は不自然なほど無表情だった。

「この罰当たりめが!」

亜希子は微動だにせず、郁子はぽかっと口を開けていた。

「嗚呼これがフードロスというもの。南無南無南無……。二人の禍とならぬよう、わたくしめが全て平らげてみせましょうぞ!」

それはまるで狂言師の口上のようだった。小指を立てながら鼻歌混じりに食べて見せる春彦に、郁子は終始声を立てて笑っているし、食べ終わるまで堪えていた亜希子もずっと肩を振るわせていた。