次に圭は講演台の上に置いた自分のノートPCをONにして、スクリーン上にプレゼンテーション用のフリーランス資料を大きく映し出す。圭が助手に尋ねる。
「今日は何人ぐらいこのホールに集まってくる予定ですか?」
助手がこたえる。
「今日の講演には、医学部の教授、准教授、助手、研究医がほとんど集まりますので、このホールは満席になると思います」
講演の準備が済んでしばらく経ち、講演会場にどんどん人がやってきて、ホールの席は上から下まで埋まっていく。助手が高木教授を迎えにいく間、加藤と圭は二人でホールの外の入り口の前に立って待つ。そこに高木教授が現れて講演開始の時間になり、会場に大きなブザーの音が鳴り響く。
そのブザーの音を合図にして、高木教授と圭がゆっくりとホールの中に入っていくと、ざわめいていた会場の医師達は静かになっていった。壇上の司会者が、おもむろに講演の開始を告げる。
「皆様御着席ください。これから講演を開始いたします。本日の講演を始めるにあたって、まず高木教授の方からお話をいただきます。高木教授、ご登壇願います」
司会者に促され、高木教授が壇上の講演台の前に立ち、マイクに向かい講演者の紹介を始める。
「本日は世界最新のAIテクノロジーを使った宇宙探査、気候変動、医療分野への応用についてお話を伺う機会を得ております。我々、医学に携わる者達も、こういった最新のITテクノロジーを使い、医学の発展に寄与していく時代になっております。講演の後には、フリーディスカッションの時間も設けております。皆様にはこの機会を、是非とも有効活用していただきたいと思っております。
では本日の講師、東山圭さんを拍手でお迎えください」
拍手に迎えられて圭が登壇し、壇上で高木教授と握手をする。圭は講演台の上に置いていたヘッドセットをつけ、広い演壇の上をゆっくりと歩き始める。圭はまず演壇の中央にある講演台の横に立ち、講演台に左手を置きながらカジュアルなスタイルで話を始める。
「皆様、ただいま高木教授からご紹介いただいた東山圭でございます。今日は最新のAIテクノロジーが、膨大なビッグデータを活用し、宇宙探査、気候変動、医療分野にどのように応用されようとしているか、世界の潮流についてご紹介させていただきます。この講演に先立ち、皆様には五分ほどの幻想的な動画をご覧いただきたいと思います」