第1章 人生の座標軸としての自分軸
1 自分軸の前提
(2)本当の自分(真我)
サキ:普段から「本当の自分(真我:true self)とは何か」ということを考えているのですが……。
コウキ:なるほど……かなり哲学的な問題を考えているのですね。この「真我とは何か」ということを真に理解し自覚すること(「自己探求」)は人生を送る上で非常に重要なことです。この問題を考える前提として、私たちは同時に2つの世界を生きているという事実を認識することが大切です。
ここで「2つの世界」とは、①例えば、衣食住や仕事などのように、身体の五感で感じられる目に見える物質注1世界と、②例えば、心・愛や夢などのように、心で感じられるけれども、目に見えない精神世界です。すなわち、この世の中には目に見える物質的価値と目に見えない精神的価値があり、両者を上手くバランスさせて生きることが大切です。
これを前提として「真我」に関する主な考え方には図表のようなものがあります。
第①は「肉体としての身体」を真我とする身体説です。この場合、心などの精神作用は脳の活動であると考えるもので、直感的な考え方です。この考え方による場合には、一般に精神面ではなく、身体と同様な物質面を重視する唯物論的な傾向があります。
サキ:この説は人間の心を軽視する傾向があり、あまり有用な考え方ではありませんね。
コウキ:そのとおりです。第②は「心」を真我とする心説です。これは目に見えない心を真我と考えるもので、一般に物質面ではなく心面(精神面)を重視する唯心論的な傾向があります。
しかし、この説は身体を軽視する傾向があり、有用な考え方ではありません。第③は「心身の両者」を真我と考える心身説であり、社会的に一般的な考え方です。
この説の長所としては心身の両方をバランス良く配慮することですが、反対に短所として「自己の感情と身体を真我と考える」ので、自他分離的な二元論的思考を取る傾向があり、それゆえ、エゴ(自我注2)をコントロールすることが難しく、またエゴ的思考が強く、他の人や社会・環境と対立することも少なくなく、さらに心身という自我を甘やかしやすいことなどがあります。
注1:すべての物質は素粒子から構成され、粒子性と波動性の双方の性質(「粒子と波動の二重性」)を持っています。この世界は波動(バイブレーション)でありエネルギーです。このうち人間だけが波動を変えることができます。波動が高いほど良いことであり、成功し幸せにもなれます。波動が高い人は一般にポジティブ思考であるという特徴を持っています。この波動を高める方法には例えば、マインドフルネスなどがあります。
注2:「自我」とは自己を対象とする認識作用(自我意識)のことであり、不変で固定的な自分が存在すると考えるものです。