全ての闇がこの世から浄化された時に、平和が見えてくる。英良は答える。
「全ての闇……本当にそう言い切れるのか。闇が全て悪と。己は勘違いしている。闇と悪は似て非なるもの。ただ闇が悪に堕ちやすい。それだけのこと。ならば、光は全てを善と言えるのか?」
英良は軽く頷く。
「何故そう決め付ける。言ったはずだ。闇と悪は違うもの。中世の世、その世界でも女を魔女と呼び、つまりは闇。悪と見なし光ある者が多くの命を奪った。それは罪と言えぬか。己は全てを知った気でいる。それで真意を見られると思うのか。平和を作れると?」
魔女狩りは法の下で執行したと、英良は答える。
「それは己の見解だ。ならば、死神とは光か闇か? 恐らく己の見解では闇。悪と答えるのであろう。光のことも知らぬ。闇のことも知らぬ。互いを深く知らず。何故、全てを理解したように語る。ならば、己は全て知っていると?」
英良は頷く。
「ならば、闇光も止めるより他ない。私は願いを叶える力を与えた。しかし、人の想像そして心境に感化され、意志を持ち個を持つようになった。己は分かるか。光と闇は己等人間より生まれたのだ。生命が進化を繰り返し、人間が産まれたように力もまた、同じように進化をした。光は人間の持つ想像通りに。闇もまたその通りに。しかし、力に寿命はない。生まれ滅することはあっても死という概念はない。それは分かるな。意識を持つ時には、人間の持つ知識、想像を与えられていた。それは偽りの真実」
英良は腕を組み、首を回した。
「個を持った力は、既に一つの生命として成り立っていた。個を持つが故に、人と同じく仲間を願い欲望を持つようになる。その時より争いが頻発する。人間の願いは光と闇の力に直結する。幾年も歳月が流れ光と闇は組織化した。争いには必ず双方の存在があった。その時ほど、多くの願いが発せられる。力を求めるのに、これ以上ない場となる。光も闇も、同じ双方が力を求めた。世を統べる力を。対抗し得る力を。考えは違えど求める結果は同じ。現す真意。もう気付いているな?」
と老人は促す。
「理解はできただろう。人間から光と闇は生まれた。それは人間の持つ感情に力が感化された結果。ならば、人間と同じように個と感情を持ち元より力持つ光と闇は、つまりは光からも闇は生まれ、闇からも光が生まれる。光から生まれる闇は、堕天と言われた。そして闇にも組織が存在する以上、仲間という感覚はある。性質上光より意識は薄いが、ないとは言えない。ならば、闇が仲間を思うのは……闇に生まれる光……当然それだけとは言えぬが、意志が蓄積され、闇より光が生まれることもある。前に私は言ったはずだ。既に、光の者闇の者そして人間が揃っていると」