プロローグ

三年時に生徒会長を務めていたオレは、幼馴染(おさななじみ)で同級生の女子と、小学生の頃からつるんでいたしもべともいうべき四人の男子で生徒会執行部を始動させると、体育祭や文化祭などの定番行事をはじめ、クラス対抗クイズ大会や体育館を貸し切って巨大迷路を作るといった生徒会主催の独自のイベントを開催したりして、アメリカのハナフダ元大統領さながらのやりたい放題の生徒会長生活を満喫していた。

ちなみに、当時の椎田中学校生徒会執行部はこんなメンバー。

会長 赤星(あかほし)(けん)(三年)

副会長 青松(あおまつ)純平(じゅんぺい)(二年)

会計 白百合(しらゆり)美保(みほ)(三年)

書記 浅黄(あさぎ)幸広(ゆきひろ)(二年)

庶務 (みどり)(だに)光司(こうじ)(二年)

企画 (もも)(じり)明王(あきお)(二年)

生徒会長生活で一番思い出深いのは文化祭だった。オレたちはメインイベントともいうべき音楽ライブにおいて、アイドルになりきって歌った(美保を除く)。歌は【ガラスのセブンティーン】。当時人気絶頂のアイドルグループ、SHOW☆TOKU太子の二枚めのシングルだ。

SHOW☆TOKU太子は、一度に十人の請願者の声を聞いてすべてを理解できた――十人の請願者の声を順番に聞いた後に的確な助言をそれぞれにした説が有力らしい――聖徳太子の伝説にちなみ、ファンクラブの中から毎月抽選で十名の願いを叶えてあげるというファンサービスで人気を博していた。

願いを叶えるといってもなんでもよいわけではなく、お姫様だっことか、ほっぺにチューとか、簡単なサービスに限られていたが。オレはメインボーカル。後輩の四人はバックダンサーとして、いや、オレの引き立て役として履はき慣れないローラースケート姿で懸命に踊ってくれた。

たまに転ぶこともあったが、そこはご愛あい嬌きょうということで、大勢の観客は笑って許してくれた。サビの部分になると盛り上がりはヒートアップ。オレたちと観客の心は、まるでひとつになったようだった。

あー、なんて気持ちがいいんだ。

アイドル最高‼

オレは最後まで心ゆくままに歌った。自分の歌声に酔いしれていた――。