【前回の記事を読む】後ろ向きな老人ホームへの入居…「あかの他人」から「真の家族」になるための第一歩とは
第1章 入居者と暮らしを創る30のエピソード
2日目 私たちに力を貸してください
私は、ご家族との対話を重ねる中で、改めてその入居者の人間像をしっかりとイメージします。そして事前に把握した資料内容と変化がないかを再確認します。つまり、何回も何回も対話を重ねながら、修正していくイメージです。
その内容は、老人ホームの個人用のファイルに記載し、職員と情報共有します。なぜなら、その入居者が老人ホームとして生活するうえで、統一した対応を取ることができるようにするためです。
このように、入居にあたりご家族に支えていただきながら入居者のことを理解していくということを行いつつ、ご家族に対し、私はお互いの信頼を高めるため心掛けていることがあります。それは、ご家族にこまめに連絡を行い、情報を共有することです。
特に、入居者にとって良くない情報こそ、ご家族に早く伝えるようにしていました。例えば、入居者が転倒した場合や、身体の調子が悪く救急搬送をしなければならない等々、まずは第一報、お伝えするようにしているのです。
確かに、良くない情報を伝えることは、伝える方も緊張しますし、連絡を受けたご家族も驚かれます。この場合の、ご家族への伝え方ですが、冷静に、かつ客観的に「事実のみ」をお伝えするようにしています。また、状況の変化がある場合、こまめに状況報告を行いつつ、施設側としては経過記録をしっかりと残すようにしています。
これは、ご家族への情報共有が遅くなればなるほど、「老人ホーム側が何か隠しているのではないか」と不信感を生じさせる恐れがあるからです。つまり、伝えづらいことであってもご家族に、素早く、しっかりと伝えることができれば、かえって入居者やそのご家族の皆さんの施設に対する信頼が高まるのではないでしょうか。
ここで、ご家族に重ねてのお願いがあります。それは、入居者を老人ホームに入居させて、「めでたし、めでたし」というわけではないということです。確かに、在宅介護が続くと、「この介護はいつまで続くのであろうか」というような不安感に苛まれることもあったことでしょう。縁あって老人ホームに入居されて、その不安から幾分解消されたことにより、入居者と「適度な距離」が取れるようになったと思います。
そうであるとすれば、老人ホームの入居者に「ちょこちょこ」逢いに来てください。介護の部分はプロに任せて、笑顔で親子の絆を確かめてください。あとは入居者が安心して生活を送ることができるよう、私たちがしっかりと生活を支えていきます。