群れを離れたお父ちゃんをシャチ達が追い始めた。
お父ちゃんは自分が犠牲になって群れを助けようというのだ。
何という男らしいお父ちゃんだろう。
しかし、むざむざとシャチ達の餌食になるお父ちゃんではない。
シャチ達を群れから充分引き離し、群れの仲間達が安全な場所まで逃げた後、お父ちゃんもシャチ達が追ってこられない深海に潜って逃げようというのだ。
しかし、そううまくいくのだろうか?
お父ちゃんとシャチ達が群れから充分引き離された時、お父ちゃんはシャチ達に追いつかれた。
シャチ達は十頭以上いた。お父ちゃんの大きな身体に噛みついてきた。お父ちゃんもシャチ達に体当たりして戦ったが、シャチ達に噛みつかれ、全身傷だらけで巨大な身体のあちこちから血が出てきた。
「うぬっ!」とお父ちゃんが憤怒の形相を見せた時、急にシャチ達が逃げ始めた。
いぶかしげに前方を見るお父ちゃんの目に映ったのは、巨大な生物の影だった。
デビルだ。デビルが現れたのだ。シャチの群れさえデビルを恐れて逃げるのだ。デビルはどうやらお父ちゃんを狙っているようだ。
「デビルの奴、まずい時に現れたな」
シャチに噛まれたお父ちゃんは全身傷だらけだ。その上、潜水してからかなり時間が立っている。ミオグロビンの中の酸素の量が減っている。早く浮上して呼吸したい。しかしデビルはすぐ目の前に迫っている。もはや逃げられない。戦うしか道はないのだ。