午前中の授業が終わり、私たちは、自分たちのクラスルームに集まった。
「おなかすいちゃったね」
「うん。お弁当食べましょ」
私たちは廊下側の机を二台並べて、椅子に腰かけてお弁当を机の上に広げた。
「私たちも三年生になって、いよいよ受験勉強も始まったね」
「京子は、第一志望は、東京栄養大学の栄養学部なのよね?」
「そうよ。私、管理栄養士の資格を取りたいの」
「将来は、料理の先生になりたいんでしょ?」
「そうよ。母の勤めているジョイフルクッキング教室に私も入社したいの。その時、管理栄養士の資格を持っていると就職が有利になるのよ」
「ジョイフルクッキング教室といったら、日本全国に教室のある、大手の会社よね」
「うん。私の母は、そこでとても楽しく仕事しているのよ。だから、私もそこに入社したいの」
「リエは、英語の教師になりたいのよね?」
「ええ、そうよ。だから大学は英語科ばかりをいくつか受験するつもりよ」
「ユミは、どうするの?」
「私は、国文科ばかりを受験するわ。将来はどこかの企業に就職して、働きながら、趣味の小説を書くつもりよ。まずは働きながらお金をためて小説本を一冊自費出版したいの。それが夢なのよ」
「どんな小説を書きたいの?」
私は質問した。
「心の温まる優しいお話を書きたいわ。私たちはまだ子どもだからわからないけれど、世の中って厳しいんでしょ? 働いてお金を稼ぐって、とても大変なことなんでしょ? だから、せめて小説の世界の中だけでも、心癒される世界を描きたいの」
「私たち、大学卒業後の将来のことまで考えていて、しっかりしているよね」
私はそう思ったので、つい言ってしまった。こんなに真剣に将来を考える女子高生なんて今時珍しいのでは?