エッセイ 『ねぇねぇみかどのおばさん』 【第3回】 六谷 陽子 不良とつるみ始めた近所の男の子…。駄菓子屋のおかみが決行したのは「えこひいき」作戦!? 一 みかどを閉店します富山の片田舎から下町に嫁いだ頃は、母も人間関係で苦労したようです。当時は、各家庭には水道は通っておらず、共同水道を十世帯くらいで使っていたのです。そこに行けば、他の誰かが必ずいます。特に水を使う時間帯は同じだから、会わずにすませる、というわけにはいかなかったようです。年配のおばさんたちは、個性的で嫌味を言う人もいれば、優しい人もいます。年配らの会話を笑いに変えて楽しむ若妻も…
小説 『透視男』 【第9回】 上田 晄暉 受注率百パーセント、事務処理ノーミスだった有能な営業マン。初めてのミスをカバーできるようになってこそ本物! 「うーん。まずは課長から解放されないと身動きがとれないですね」山沖は発注ミスという言葉に敏感に反応して、ちらちらと川原の方を見た。川原は山沖の視線を感じたのか、うつむき加減になってほおをまた赤らめている。竹村は隣の川原の仕草が目に入らなかったみたいで、はしを手にしたまま俺の方を見つめてきた。(松岡さん、早く名案を言い出して)という感じで。「じゃぁ、まずは田所との和解を早急に済ませて、次に発注ミス…