第一章 ギャッパーたち
(一)畑山耕作
畑山耕作は警察官である。
畑山は警察官でありながら漫才という仕事を兼職しているのである。ギャッパーなのである。
転職なら、全く仕事のジャンルが違っていてもありえない話ではない。それこそ極端な話、ヤクザになった警察官だっている。むしろ元警察官となればその引き合いは強いともいえる。芸人の場合でも、元警察官の芸人だけでなく、元自衛官の芸人だっている。元暴走族の総長だっている。
しかし兼職となれば話は別である。
確かに、公務員は兼職が禁止されており、この規定に反するのではないかという疑問もある。しかし、畑山は、そもそも報酬を得ていなければ問題とならないと考えている。報酬がなければそれは単なる趣味であり、趣味ならば兼職とはならないと考えられるからである。
ただ、畑山の場合には、報酬がないというよりも、報酬と呼べるほどのものでないだけなので、ちょっと違うとはいえる。いずれちゃんと報酬がもらえるようになればその際に考えればいいのである。しかも、それももし上司に分かれば、そして、その際に上司に認められなければということなので、報酬がもらえるようになっても、絶対にできないというわけでもないと思っている。
人気が出れば、警察の宣伝にもなるのだから許されるのではないか、警察の人気取りのためのゆるキャラだっているんだから、同じじゃないかと、楽観的に考えているのである。
昨今の状況では、自衛官なら新人募集のために人気を取る必要もあるので、多少の兼職は認められる可能性がないわけではないが、警察官はそれと同じではない。人様から笑われては困る職業なのである。その点の理解ができていないというか、理解の違うところが、畑山らしいし、面白さの源泉となっているのかもしれない。