だが、その次をめくると、吐き気を覚えるようなおぞましい文字がノートの両面いっぱいに殴り書きされていた。
【死ね】
以降、ページをめくるたびに罵詈雑言の嵐が続く。
【邪魔】
【ウザイ】
【キモイ】
【ブス】
【うんこ】
【どんくさい】
【さっさと帰れ】
【学校にくるな】……。
わたしは耐えられなくなり、ノートを閉じた。
葬式の翌日に姉の遺品整理をしていたときのことだ。娘の死をまだ受け入れられないのか、ショックで寝込んでいる母奈津子の様子を見に寝室にいったところ、化粧台の上にポツンと置いてあるこのノートに目がとまった。
どうしてこんなところに姉のノートがあるのだろう。よくわからないままに、何気なく手に取って中を見た。
わたしは確信した。姉はいじめを苦に自殺したに違いない、と。母もいじめの可能性を疑っていたのだろう。
そういえば、姉の通う中学校にちょくちょく出かけていた。そんな母の行動を当時のわたしは別段気にも留めていなかったが、そのときようやく理解した。母は学校側と闘っていたのかもしれない。
自殺といえば、折しもその中学校では新任の男性教師が自宅で首を吊って死亡するという出来事が起きている。姉が亡くなった二週間くらい前のことだ。朝方、わたしが小学校にいく支度をしていたところ、新聞を見ていた父が淡々とした物言いでこう言った。
「美智留の学校の先生、死んだみたいだぞ」と。
姉はいつも早く家を出るのでその場にいなかったが、いたらどう思っただろうか。身近な人が自殺するという衝撃的な事実に……。