幸い資金はある。金持ちたちの社会で暮らしてきたから、金持ちの好むセンスも理解できていた。そこで、交渉してはいろんなものを買いあさって、日本で商売をしてみようと思った。これがあたり、学生ながら会社まで立ち上げた。大学は、ようやく卒業はしたが、そんなものは大した意味を持っていない気がした。

何度目かの渡米の時、裕美と知り合った。裕美も、自分と同様に、日本での大学生活に嫌気がさして、アメリカに留学してきたのだ。そんな二人は、たまたま友人宅のパーティーで知り合い、意気投合した。裕美も、アメリカで自分の能力に目覚め、アメリカのファッション会社で働くことになった。

英介は、正介に会社を継ぐように迫られ、英介も金持ち相手の自分の事業に限界を感じ始めていたところで、現在の会社に入ることを承諾した。そして、アメリカでの経験を生かして、まずアメリカ支店に赴任したのである。そこで、裕美とまた出会い、結婚した。

そこで七年間を過ごし、祐介が六歳、真理が三歳の時に日本に戻った。裕美は、アメリカで培ったファッションビジネスを日本で生かそうと、事業を立ち上げたのである。

子供たちは、まだ小学校に入る前に日本に戻ったので、アメリカでの記憶は、両親が忙しく働いていたことぐらいで、日本に戻っても、アメリカから日本へと生活環境が変わったことしか分かっていないのである。

これでは将来、祐介が昔の海外生活を紹介する番組に出演しても、生活していた場所が分からないから、番組にならないのが残念ではある。